038912 ランダム
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1-3

 「あれが、正論大佐です。」
 司令官が指差す先には、ゴミ拾いをしている中年男性が居た。
 「では、戦ってきてください。私は顔が割れるとまずいので、遠くから眺めています。」
 「え、あのおっさんと戦うの?」
 赤川の疑問には答えず、司令官は遠く離れてしまった。
 仕方なく赤川は、正論大佐だと言うゴミ拾いおじさんに声をかけた。
 「あのー、すいません。」
 「・・キミは、誰だい。私に何か用でもあるのかね。」
 おじさんは、いかにも大佐っぽい横柄な態度で赤川を見た。赤川は、この男がホントに大佐だと、なんとなく思ってしまった。不思議だ。こいつらみんな不思議だ。
 「あのー、あなた、正論大佐?」
 「!・・貴様、なぜ私の正体を知っている!?」
 赤川の言葉に、大佐は身構えた。ちょっと、大げさすぎる。
 「あのー、あなたを倒せって言われてきました」
 「・・なるほど、またあいつの仲間だな?・・それにしても、な ぜ私を倒そうとする。私は世界平和を願う善良な組織の大佐だと言うのに。」
 自分で自分を善良だと言う大佐に、胡散臭さを感じた。まあ、こいつらとのやり取りは常に胡散臭いのだけど・・。
 「あのー、俺まだその辺が良くわかってないので、説明してくれませんか?あなたたちの思想がどういったものなのかを。」
 大佐は、赤川に対して自分たちの思想を説明してくれた。
 大佐の話を聞いて、赤川は思った。彼らは、確かに世界の平和を願っている。それは正しいことだと思う。
 しかし、彼らが求める世界は、言い換えると人類全てが平坦である世界のことだった。世界中、一人一人の人間が完璧に、自分が世界のためにするべきことをする、といったような・・。赤川はそれを聞きながら、どうしても怪しい宗教を広める団体のような胡散臭さをぬぐいきれなかった。
 「一人一人が完全な人間になれば、世界が狂うことなんて無い。全ての人が世界全体を見た正しい判断の下に行動できるならば、争いは無くなる。環境破壊も、貧富の差も無くなる。」
 確かに大佐の言うことは正しいような気がする。しかし、赤川は、どうしても大佐の言っていることを認めることが出来なかった。
 世界の人が正しい判断をして行動する。そんなの出来るわけがない。それに、一人一人の価値観の違いや考え方の違いはどうすることもできないだろう。
 そう言った赤川に対して、大佐は諭すように言った。
 「世界中の人間に統一の価値観、考え方をもたらす。それが我々の最終的な野望だ。」
 その言葉に、赤川の心から怒りが湧いてきた。
 「統一の価値観なんて、そんなの洗脳じゃないか!一人一人の価値観をないがしろにして、世界平和なんてあるわけがない!」
 「世界平和よりも重要な個人など存在しない!」
 大佐は言った。大佐は、世界のために人間一人一人を無くそうとしているのだ。
 赤川の体は、火がついたように熱くなっていた。
 「たとえ、お前の言っていることが正論だとしても、俺は受け入れることが出来ない!完全な人間なんて居ない。一人一人が考えて、失敗して成長して・・・そうやって生きていくからこそ、人間の命、この世界には価値があるんだ!」
 「そんなのは勝手な人間の理論じゃないか!」
 「100点満点じゃなきゃ許されない管理された世界なんて俺には認められない!俺たちは機械じゃないんだ!60点取れれば可でいいじゃねーか!!」
 赤川はダメ人間レッドに変身し、全身の力を振り絞って大佐に向かっていった。
 「覚悟しろー!」
 赤川の心の中で、自分への劣等感が何かと化学反応を起こしたかのように燃えていた。そして、大佐と乱闘しているうちに自分から溢れ出す力に耐えられなくなり、赤川の意識は遠のいていった。

 そして赤川は、意識を失った。

 ・・・・


 赤川は気がつくと、自分の部屋にいた。
 一瞬、何がなんだかわからなくなる・・・あれは、全部夢だったのか。
 「いやいや、夢オチなんてそんなベタな!」
 一人で突っ込みをいれて、赤川は自嘲気味にふっと笑った。
 「そうだよな。あんなヒーローなんているわけが無いよな・・」
 その時、テーブルの上の紙に目が行った。メモ用紙のようだ。

 『昨日の戦い凄かったよ。これからも頑張ってね! 司令官(はあと)』

 「夢じゃねーのかよ!!」

 結局は、ベタなオチだ・・・。



 ・・・
 赤川の戦いはこれからもつづく。


おわり


あとがき

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